アオサナエの孵化

このページの最終更新日は2001年12月18日です.


アオサナエ  Nihonogomphus viridis Oguma

近畿地方では,5月を中心に河川中流域で,比較的多く見られます.アオサナエの産卵はやや流れの速くなった瀬の所にやってきた♀が,ホバリングしながら卵を出し,小さな卵塊を次々空中から水面に落とします.空中から水面に落ちるまでに卵を受け止めて採卵しました.卵の大きさは産卵直後0.48mm×0.44mm.孵化直前は0.56mm×0.52mmです.産卵直後にくらべて孵化直前には体積で約1.7倍になってます.最短卵期11日,平均卵期(半数孵化)14日でした.

アオサナエの発生のようす 同じ2卵を同じ向きから継続観察したものです.この2卵は,ほとんど同じ速さで発生が進んでいます.粘着性の強い付属物があり,それが石等に付着するため,卵の前端(前極)が下になります.胚が反転すると頭部になる部分が下を向くことになります.

1は産卵日に撮影,2は2日後,3は4日後,4は6日後に撮影

5は産卵日から7日後,6は8日後,7は11日後,8は12日後の撮影です.

  

写真A:卵の形 水中に入ると粘着力の強い付属物が広がって石等にくっつきます.胚の反転後は胚の頭部が下になった形になっています. 写真B: 付属物の形(他の写真の3倍に拡大) 中央が薄く周囲が厚い浮き輪状の形をしており,強い粘着力があります. 写真C: 柄のようになっている部分の拡大写真(他の写真の10倍に拡大)

アオサナエの孵化のようす この個体の,卵から前幼虫を経て1齢幼虫になるまでに要する時間は,8分10秒でした.1は孵化4分48秒前,2は卵の殻が割れた直後,4は前幼虫です.サナエトンボ科では卵の殻が厚く,丈夫に出来ているようで卵から出る時の動き(卵歯で卵をきる動き)が長く続きます.前幼虫が卵から出て小休止の後,胸部背面から1齢幼虫が出始め,胸部,頭部,触角,下唇腮,肢,腹部が抜け出し,1齢幼虫になります.5は前幼虫から1齢幼虫になるところです.7の直後に前幼虫から1齢幼虫になります.

 

左:アオサナエの1齢幼虫  1齢幼虫の大きさ体長(頭部から腹部)約1.30mm,頭幅約0.39mm,触角の長さ約0.17mm.右:アオサナエの2齢幼虫  1齢幼虫は数日で2齢幼虫になります.少し大きくなり,特に触角が1齢幼虫とは違います.翅芽もややはっきりしてきます.