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ナミアゲハ(アゲハ) の卵寄生蜂

このページの最終更新日は2005年6月28日です.


カラタチの垣根などは,もう見かけなくなりましたが,ミカンの仲間の植物は市街地も植えられていますので,このナミアゲハ(アゲハ) Papilio xuthus Linnaeusは市街地でよく見かけます.食草のミカン類の木で見つけたナミアゲハの卵を持ち帰り,卵寄生蜂を調べてみました. 観察した卵寄生蜂は大きさが約0.5mmの小さな蜂でした.


図14-1 産卵にきたナミアゲハ 兵庫県芦屋市 2005/6/26撮影 図14-2 ナミアゲハの卵 兵庫県芦屋市 2005/6/26撮影
図14-3 卵寄生蜂が寄生したナミアゲハの卵 兵庫県芦屋市 2005/6/26撮影 図14-4 ナミアゲハの卵 球形に近く,底の一部が平らです.大きさは直径1.21mm.高さ1.03mmでした.2005/6/26撮影 図14-5 卵寄生蜂が出たナミアゲハの卵 穴は卵寄生蜂が卵から出るためにあけたもので,穴は卵寄生蜂がやっと出ることができる大きさです.穴の直径は0.23mmで した.2005/6/26撮影

 

1つの卵の中から出てくる卵寄生蜂を数えてみました.この卵では最初に♀が出て,それから約15分で7頭の♀が出てきました.その後♂は卵の中で動きまわっていま したが,♀が全部出てから,約30分後に♂1頭が出てきました.中は見えませんが,まだ中に♂が残っていたようです. 2005/6/25撮影
図14-6 最初に出てきた♀ 少しずつ時間をかけて穴をあけます.卵の中に赤く見えるのは中にいる卵寄生蜂の複眼です.中で動き回っているのがわかります. 図14-7 2番目に出てきた♀ 最初は穴はそれぞれがあけ始めるようで,何箇所も穴が開きそうですが,1つが開いてしまうと,開いた1つの穴から次々と出てきます.
図14-8 3番目に出てきた♀  出てくるときはまだ翅が伸びていませんが,しばらくすると翅がのびます. 図14-9 4番目に出てきた♀ 出るとすぐにあしや体についたごみを取ります.
図14-10 5番目に出てきた♀(左側) 右側は4番目に出てきた♀ 図14-11 6番目に出てきた♀ 右のは4番目に出てきた♀
図14-12 7番目に出てきた♀ ♀は全部で7頭のようでした. 図14-13 8番目に出てきた♂ ♀が全部出た後,卵の中を歩き回って♀が出た後,ゆっくり出てきたようです.半日ほど経過してから卵を入れてあった容器の中を調べると♂が3頭いましたので,このときに卵の中に,まだ♂が2頭残っていたようです.
2つ目に観察した卵では♀が20頭出てきましたが♂は 出てきませんでした. 

 

この卵では♂が先に出てきました.出てきた♂は卵の周りを離れず,♀が出てくるのを待っています.この卵からは♂が6頭と♀が4頭出てきました.2005/6/27撮影
図14-14  この♂は自分で穴を開けて一番に出てきました. 早く卵の外に出た♂は卵の周囲で♀が出てくるのを待っています. 図14-15 交尾 外に出た♂は♀が出てくるとすぐに交尾をします.交尾時間は数秒間です. 翅はまだ伸びていません. 図14-16 卵の周囲を歩き回る♂ この卵では出てきた6♂が卵の周囲を歩き回っていましたが,時間がたつと少しずつ他の卵がある場所にも移動していきました.

 

図14-17 卵寄生蜂の大きさ ♂も♀も個体差が大きく,♀の体長は0.33〜0.57mm程度.♂の体長は0.34〜0.46mm程度です.平均すると♂のほうがやや小さいようです.下の写真の拡大率は同じですが,大きさに かなり差があるのがわかります.2005/6/28撮影 図14-18,19 触角(アンテナ)のようす ♂の触角の形は♀と異なります.2005/6/28撮影

 

ナミアゲハの卵から出た直後,蜂の翅はまだ伸びていません.♀の場合は卵から出た後,しばらくすると翅が伸びてきます.そのとき,あしを使ってていねいに翅をととのえます.その後すぐに歩き回り,ナミアゲハの卵を探し,産卵するようです.  ♂は♀と比べると翅が伸びるのが遅いようです.羽化した次の日には翅が伸びているものが多いのですが,中には羽化した次の日になっても,翅が伸びていないものがおります. 2005/6/25,26,28撮影
図14-20 卵から出た直後の♀ 宿主の卵から出た直後の♀で,まだ翅が伸びていません. 図14-21 翅が伸びた♀ ♀は卵の外に出て,しばらくすると翅が伸びてきます.♀は体色が黄色です. 図14-22 翅が伸びた♂ ♂は翅が伸びるのが遅いようで,なかなか翅がのびてきません.体色は♀と異なり,腹部は黒っぽい色をしています.
図14-23 産卵する♀ ♀は少し飛んだり,すばやく動きまわって卵を探します.卵があると触角で確かめたのち産卵します.(下の図では赤い矢印で産卵管を示してあります) 図14-24 卵から出てきた♂  外に出た♂は卵の近くで静止していることがよくあります.