トンボの採卵の方法
このページの最終更新日は2009年7月25日です.
卵期を調べる 卵の形や大きさを調べる 卵の発生を調べる
トンボの卵については,いろいろ興味ある研究課題があります.卵を観察するために,採卵することが必要です.目的によってはトンボを採集してきて採卵することもありますが
,できるだけトンボを傷つけず,必要な数の卵だけ採卵したいものです.写真の和名のあとの()内の月は撮影した月です.
野外での採卵(均翅亜目) 野外での採卵(ムカシトンボ亜目,不均翅亜目)
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トンボ科,サナエトンボ科,エゾトンボ科のように,多数の卵を短時間に産卵
する種の採卵は,産卵中の♀や産卵に来た♀を採集して採卵します.採卵した後
,捕まえたトンボはすぐ逃がしましょう.イトトンボ科,モノサシトンボ科,アオイトトンボ科,カワトンボ科,ムカシトンボ,ムカシヤンマ,ヤンマ科は産卵している♀を見つけて産卵植物
や産卵されている土などを持ち帰り,産卵植物などから卵を取り出します.しかし,卵の研究には確実な産卵日とある程度の数が必要なことが多いので,目的によってはトンボを持ち帰って,ろ紙,ティッシュペーパー,朽木などに産卵させることがあります.
採卵の方法
野外で採集してきた産卵植物の中にあるイトトンボ科の産卵直後の卵は,見えにくいことが多いものです.その上,採集時点より前に産卵された卵や,他の種の卵
が産みこまれている可能性があります.また,植物から産卵 直後のやわらかい卵を取り出すのは難しく,また,植物から取り出した卵には植物の破片などがくっついており,観察しにくいことがあります.そのため,発生のようすを調べるときは
,ろ紙やティッシュペーパーに産卵させます.
ろ紙やティッシュペーパーに産卵された卵は産卵直後でも取り出すことができます.
野外で採集してきた♀を,湿らせたろ紙またはティッシュペーパーを敷いた容器に入れておくと産卵する種がかなりあります.野外で♀を採集してすぐ容器に
入れるときは,イトトンボ科はフィルムケース
程度の小さい容器も使えます.すぐに産卵しないこともありますので,そのまま持ち帰り,1日か2日静かにしておき産卵させます.個体によって産卵しないものもいます.採集場所が近くであれば,産卵後,産卵した♀を元の場所に戻してやりましょう.
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採卵用の容器
トンボの翅(はね)が容器に触(ふ)れない程度の大きさは必要です.イトトンボ科にはフィルムケースも使えます.フィルムケースを使う場合は,まず底に数枚重ねて円形に切ったろ紙を敷き,次にフィルムケースの高さ(5.0cm)より少し小さめ(約4cm)に切ったろ紙をフィルムケースの内側にぴったりくっつくように入れた後,スポイトで水を2ccほど入れると出来上がりです.フィルムケースはイトトンボ科以外には小さすぎるので,モノサシトンボは少し大きい容器に入れます.大き目の容器ではティッシュペーパーが使えますので簡単です.ヤンマ科ではさらに大きな容器を使います.ろ紙やティッシュペーパーを湿らせる水は水道水など,ごみの入っていない水を使います. |
観察用の容器 ろ紙やティッシュペーパーに産卵させた卵はそのままでは観察しにくいので,一部または全部を観察しやすい容器に入れ変えます.顕微鏡や実体顕微鏡でも,そのまま観察できる容器が便利です.
ろ紙やティッシュペーパーに残しておくときは,ろ紙やティッシュペーパーが何枚も重ならないようにし,水も入れすぎないようにします.
容器の例 1:容器のふたを利用したものです実体顕微鏡で観察するのに適しています.2:孵化(ふか)したあともしばらく観察できます.4:少数の卵を顕微鏡で長期間観察できる
自作の容器です.観察後は乾燥しないように3の容器に入れておきます.
カバーグラスは端に色のついたビニールテープを細く切ってつけておくと,うっかりどこに置いたかわからなくなることが防げます.
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写真:ティッシュペーパーに産卵された
ホソミイトトンボの卵 ホソミイトトンボの卵は黒っぽいので,産卵したことは肉眼ではっきり確認できます.それに対し,クロイトトンボ属(ぞく)の卵は産卵
直後はほとんど無色で見えにくいのでルーペで探します. |
写真:ティッシュペーパーに産卵された
オオイトトンボの卵 孵化直前の卵の大きさは約1mm(長径1.07mm,短径0.21mm)です.
産卵直後はほとんど無色ですので気をつけてみなければ見逃すことがあります.写真は卵の後端側から撮影したものです. |
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トンボ科,サナエトンボ科の一部,エゾトンボ科の一部は産卵中の♀や産卵にきた♀などを捕まえ,腹端
(ふくたん:腹部の先のほう)を水につけると次々と産卵しますのでその卵を持ち帰ります.必要数の卵がとれたらトンボは逃がしましょう.写真 左:タイリクアカネ(11月) 右:タイリクアカネの産卵直後の卵 卵の大きさは産卵
直後0.55mm×0.35mm,孵化直前0.61mm×0.43mmです. |
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確実に孵化する卵を得るためには,産卵中の♀,または産卵 に来た♀を捕まえて産卵させます.
写真:産卵中のナツアカネ(9月) |
野外には水道水など,ごみの入っていない水を持っていき,それに産卵させます.容器はフィルムケース
程度の大きさの容器が適当です.近くにきれいな水があればよいのですが,にごった水では卵にごみがつき観察しにくくなります.採卵できたらトンボは逃がしてやりましょう.写真左:ウスバキトンボ(8月) 右:リスアカネ(9月) |
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