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トンボの卵期を調べる

このページの最終更新日は2005年4月20日です.

 採卵の方法  卵の形や大きさを調べる  卵の発生を調べる


トンボの卵が何日ぐらいで孵化するかを調べるときについて,これまで私がやってきた方法と注意点について書いてあります.


それぞれのトンボの採卵は採卵の方法のページに書いてありますが,卵期を調べる場合は,確実にいつ産卵したか,を知る必要がありますので,ろ紙や水などに産卵しにくい種,卵塊をつくり産卵する種以外は,♀を持ち帰って適当な容器に産卵させるほうが確実です. トンボが産卵している産卵植物を観察してから,その植物を持ち帰った場合でも,それ以前に産卵されていた卵や,別の種の卵があることがありますので注意が必要です.

よく使う道具  スポイトは卵の移動に使いますが,トンボの卵の中には卵の周りのゼラチン質が特にくっつきやすいものがあります.スポイトにくっついてしまって離れなくなることもありますので,少し動かしてみてからスポイトを使うとよいでしょう.はじめくっつきやすいけれども,しばらくするとそれほどくっつかないものが多いようです.スポイトの上のものは柄つき針です,観察するときに卵を動かしたりするときに使います,竹の割り箸に普通の縫い針をはさんで糸などで巻いたものです.接着剤を使ってもできます.2本ぐらいあるほうがよいでしょう.ピンセットは先のとがったもので,細かな操作が出来るように,両方の先をきっちりと合うように調整しておきます.その上は細字用の筆で,卵を傷つけずに移動させるのに使います.左上の黒い丸いものは,表が白,裏が黒のプラスチックの板です.卵には白っぽいものや黒っぽいものがありますのでどちらか の向きにして,その上に卵をのせて使用します.見えやすい色であれば,何でもよく,最近,私は白,黒,青色のプラスチック板を使っています.上の右のものはフィルムをみる4倍のルーペですが,卵の観察にもちょうど良い倍率です.
卵期を調べるときに卵を入れている 小容器 これも何でもいいのですが,いくらでもあるフィルムケースを使った容器です.そのままでも使えますが,倒したり,ルーペで見えなかったりしますので,上部を切り取って下の部分だけを使っています.ふたがないと水がなくなったり,ほこりが入りますのでふたが必要ですが,もとのふたを少し削ればそのまま使えます.そうすると ,倒れたりしないので安心です.この容器は小さいので,別の大き目の容器にまとめて入れることもできます.また温度条件を調べるために冷蔵庫に入れるときも場所をとらなくてすみます.
やや大きめの容器 最近は安価なプラスチックの容器がありますので,観察する種が少なければ,少し大きな蓋のしっかりできる安定した形の容器を使うのがよいと思います.

デジカメを使う以前はフィルムケースがどんどんたまったので,主としてフィルムケースを使った例を書きました.しかし,デジカメを使うようになってからはフィルムケースが手に入らなくなったので,安価なプラスチック製の容器を使うことが増えてきました.

卵観察用の容器のいろいろ  イトトンボの採卵用として,容器の内側にティッシュペーパーを巻き水でぬらした容器(フィルムケース),生殖弁をもつトンボ科,エゾトンボ科、サナエトンボ科の採卵用の水を入れた容器(フィルムケース),卵を入れて観察する容器(フィルムケースを切ったもの)やプラスチックの小容器などです.容器は透明なものがよいのですが,最近のフィルムケースは白いので,そのままでは少し見えにくいようです.プラスチックの小容器も透明なものがベストです.野外に持っていくときには,目印またはボールペンで記入できるように,ビニールテープをはっておくと便利ですが,長く置いておくとビニールテープののりが容器についてベタベタします.そのような時はセロテープかガムテープを押しつけてはがすとほとんどきれいに取れます.
卵期を調べる  一度に産卵され卵を同じ条件下においても,同じ日に孵化するわけではなく,種によっては孵化するまでの日数が卵によって大きくちがいます.そこで,一番最初に孵化した日までの日数を最短卵期卵の半数が孵化した日までの日数を平均卵期ということにします.卵期を調べるには,50卵から100卵ぐらいを1つの容器にできるだけ互いに離して入れておき,産卵日と孵化した日と数を記録して,最短卵期と平均卵期,さらにできればしばらく観察を続けて孵化率なども調べればよいと思います.写真は上部を切り取ったフィルムケースに入れたナニワトンボの卵です.卵 が孵化し始めたら毎日記録をとって,1齢幼虫と卵の殻をスポイトで吸い取り,1齢幼虫は目的に応じて別の飼育容器に移します.写真の残りの卵数は46卵です.
やや大きめの容器 止水性(池などの水の流れの少ないところに生息する)のトンボは小さな容器で よいと思いますが,流水性のトンボは、小さい容器では発生率や孵化率がよくありませんので,少し大き目の容器に入れます.(他に原因があるのかもしれませんが)

フィルムケースは直径が3cmですが,この写真の左側にある容器は直径8cmですので,ヤンマ科のような大きな卵を100卵入れても余裕があります.孵化後しばらくこの容器のままでも飼育できます.流水性のトンボ卵もこの大きさなら孵化するまで問題ありません.

右側の容器はフィルムケースよりやや大きい容器です.採卵した卵を入れるために使っていますが,蓋がしっかり閉まりますので,水がこぼれることがありませんので,安心です.

浅い容器 プラスチック容器の蓋を利用したものですが,このまま実体顕微鏡で観察できますので便利です.水が入る部分の大きさは直径6cmです.この容器の蓋として,写真ではガラス板を切って載せてありますが,7cmのプラスチックの円形の板が使えます.この容器は顕微鏡撮影等にも利用できます.

 

 

近畿地方に生息するトンボの卵期で,私が調べたものについては卵のページにそれぞれ書いてあります.卵期に一番大きく影響するのは温度(水中の卵は水温、水面上のものは気温)で,同じトンボでも産卵する時期の長い種ではかなり違います.たとえば,ホソミオツネントンボでは,4月に産卵した卵は平均卵期が14日でしたが,7月に産卵した卵は平均卵期が8日でした.しかし、同じ時期に産卵された卵でも,卵によりかなり差があるものが多いようです.調べてみてください.

孵化した後,孵化した1齢の齢期を調べたり,飼育して幼虫期間を調べる方法は幼虫の飼育のページを見てください.