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トンボの飼育

トンボの研究のために,最近は採卵から羽化まで行う人が徐々に増えてきました.ここでは,私が行っている卵から羽化までの簡単な飼育法を中心に書いてあります.

2010年 アカネ属の卵・幼虫の飼育の方法のページをつくりました.→アカネ属の卵・幼虫飼育

卵の観察

トンボの卵を観察,研究している人は今のところあまり多くないのですが,卵の観察は興味ある分野です.卵期を調べるには,ルーペ,幼虫を得るために採卵するのであれば肉眼ですみますが,発生のようすや卵の大きさなどを調べるには,どうしても顕微鏡が必要なため敬遠されているようです.しかし,今後自然環境の保全などにも卵の生態の解明が必要になると思われます.

採卵の方法  卵期を調べる  卵の形,大きさを調べる  卵の発生を調べる

幼虫の飼育

最近はトンボの幼虫も注目されるようになってきて,観察、研究をする人が増えてきました.幼虫ははじめ小さく,また水中に生息することから,野外での観察が難しく,成虫とくらべると生態の詳細がわからない種(しゅ)がまだ多くあります.幼虫の生態は飼育することである程度わかります.これまでに私がやってきた飼育の方法を書いてみます.誰でもができるように,身近にあるものを利用した方法ですので,さらにいろいろ工夫して飼育してみてください.観察したいろいろな知見は今後の自然環境保全などに役立つと思います.

トンボの幼虫の特徴  捕まえた虫がトンボの幼虫(やご)かどうかわからないとき 

幼虫の餌 幼虫を飼育するときの餌について知りたいとき

幼虫を羽化させる  中齢から終齢幼虫を羽化まで飼育するとき,または羽化の観察をするとき

若齢の飼育 卵からの幼虫の期間や幼虫の生態を調べるとき

成虫の飼育

トンボの成虫の飼育には餌と飼育場所が必要です.ここでは,羽化後の体色変化などを観察するとき,または採集した成虫から多くの卵を得るためにしばらく飼育するするとき,などのような狭い場所での短期間の飼育について書いてあります.

トンボの成虫の飼育法

 

トンボの孵化

近畿地方に生息するトンボの卵の孵化を,順次掲載していきます.卵期(産卵してから孵化するまでの日数)は,産卵した卵(複数)が最初に孵化した日までを最短卵期,卵の半数が孵化した日までを平均卵期としています.これまで観察した中ではウスバキトンボが最も短く,最短卵期は3日でした.平均卵期も4日でした.卵期が長い種では平均卵期が180日をこすものもあります.

孵化のページの拡大率は,比較できるように同じ大きさにしてあります.(拡大率の異なる写真には拡大,または縮小と書いてあります.)卵が大きいヤンマ科やアオイトトンボ科のアオイトトンボ属は縮小してあります.

ふつう孵化といっているのは前幼虫が殻から出始める時ですが,内部の動きから判断すると,孵化はその数時間前から始まっています.均翅亜目では,前幼虫が出てくる数時間前から,卵の前端が伸び始めます.不均翅亜目も,孵化数時間前から内部の動きが活発になってきます.従って,その時期も孵化に含めるのが適当と思いますが,ここでは卵から出はじめるときを孵化が始まったとしています.孵化のページでは,前幼虫を経て1齢幼虫になるまでの写真と時間経過を書いています.

卵から出た前幼虫の期間は短い種で数十秒です.数分のものが最も多いのですが,水からやや離れた場所で孵化して前幼虫になる種や,水辺の草の茎などで孵化して前幼虫になる種は,前幼虫 が飛び跳ねて水のある場所に到達してから1齢幼虫になりますので,前幼虫の期間が数十分以上のものもあります

卵から出てきた幼虫を前幼虫(prolarva),前幼虫からでた幼虫を1齢幼虫(1st instar larva)としています.研究者によっては前幼虫を1齢幼虫,ここでいう1齢幼虫を2齢幼虫として取り扱うこともあります

 

マダラナニワトンボの孵化 ハグロトンボの孵化 アオモンイトトンボの孵化 マルタンヤンマの孵化
ウチワヤンマの孵化 コフキトンボの孵化 アサヒナカワトンボの孵化 アオヤンマの孵化 
グンバイトンボの孵化 オツネントンボの孵化 アオサナエの孵化 ネアカヨシヤンマの孵化
チョウトンボの孵化 キイロサナエの孵化 キイトトンボの孵化 コオニヤンマの孵化
ヒヌマイトトンボの孵化 タイリクアキアカネの孵化 ウスバキトンボの孵化  

トンボの羽化

近畿地方でのトンボの羽化のシーズンは,3月下旬のアジアイトトンボの羽化から始まります.

羽化の過程 終齢幼虫が水中から完全に出て,定位(ていい:羽化場所にしっかりつかまること 写真A)します.次に,胸部背面が裂開(れっかい:胸部背面が裂ける 写真B)し,成虫の胸部,頭部,腹部の一部が出ます.その後,休止期(きゅうしき:ほとんど動かないように見えるとき 写真C)を経て,脱出(だっしゅつ:からの中に残っていた腹部も出る 写真D,E )します.脱出後は翅が伸びた後(写真F),腹部が伸びます(写真G).このとき腹部はかなり太いのですが,体内の水分や空気が出ると,見慣れたトンボの姿になり飛べるようになります.翅の斑紋や胸部,腹部の斑紋や色もはっきりしてきます(写真H).

各ページの図中には羽化の順を示す番号と経過時間を書いておきましたが,経過時間は胸部背面が裂開し成虫が出始めるときを00:00:00(時:分:秒)としています.定位は判断がやや難しいので,各ページの文中では胸部背面が裂開したときを羽化が始まったとしています.種によっては休止期,翅伸長期などを書きましたが,休止期の始まりも判断が難しいので,休止時間には誤差があるかもしれません.また環境による影響などで羽化に要する時間は,同じ種でも個体によりかなり変化します.

 
羽化の過程の説明図  (ハネビロエゾトンボ♂:倒垂型)
羽化の過程
 
アオヤンマの羽化  ノシメトンボの羽化 ネアカヨシヤンマの羽化 アサヒナカワトンボの羽化
クロイトトンボの羽化 ショウジョウトンボの羽化 キイロサナエの羽化 クロサナエの羽化
アオサナエの羽化 タカネトンボの羽化 スナアカネの羽化 キトンボの羽化
アオイトトンボの羽化 クロスジギンヤンマの羽化 タベサナエの羽化 ヤブヤンマの羽化
グンバイトンボの羽化     野外での羽化の様子